御釈迦様はその蜘蛛の糸をそっと御手に御取りになって、玉のような白蓮の間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御下しなさいました。
(中略)
この糸に縋りついて、どこまでものぼって行けば、きっと地獄からぬけ出せるのに相違ございません。
(『蜘蛛の糸』より抜粋)
6月の文豪カクテル・モクテル
芥川龍之介
『蓮池地獄~蜘蛛の糸〜』
蓮花茶の馨るラムにホワイトカカオと生クリームをあわせ、極楽に咲く薄紅色の蓮の花をイメージした、高貴な一杯に仕立てました。
ノンアルコールでもお作りいたします。
縁から垂らされた繊細な蜘蛛の糸、その先に待ち受けるは血の池地獄。
糸を伝って辿り着く先はカンダタの堕ちた地獄か、はたまた御釈迦様の極楽か…
結末はご自身でお確かめください。
6月の十誡、もう1人の文豪は太宰治。
学生時代から芥川龍之介を敬愛し、芥川賞の授賞を渇望したことでも知られていますね。
太宰は6月に生誕、また命日である桜桃忌も6月です。
現代でも愛され続ける彼の作品『人間失格』『桜桃』にオマージュを捧げるお飲み物をご用意しました。
自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食いちがっているような不安、自分はその不安のため夜々、転輾し、呻吟し、発狂しかけた事さえあります。
自分は、いったい幸福なのでしょうか。
(太宰治『人間失格』より抜粋)
6月の文豪カクテル
太宰治『人間失格』
太宰自身の自伝ともいえる『人間失格』
永遠に償い難いような喪失感を、“飲み残した一杯のアブサン”と比喩した主人公・葉蔵の言葉より、物語に沿った3つのカクテルそれぞれにアブサンを使用してお作りいたしました。
『人間失格(第一の手記)』
太宰の故郷、津軽のりんごを使用した自家製アップルティーロワイヤル。
常に道化を演じていた幼き葉蔵の心の畏れと苛烈な葛藤を、アブサンを垂らした角砂糖の炎のゆらめきに重ねました。
『人間失格(第二の手記)』
“女に惚れられる”葉蔵にちなんだ、アドニス(美少年)のツイストカクテル。
作中にも登場する電気ブランにヴェルモット 、シェリー、アブサンビターズを合わせ、ソーダアップ。
口当たりの良い軽い味わいですが、アルコール度は高めですのでご注意を…。
『人間失格(第三の手記)』
スパイスの効いたブラヴォドブラックウオッカにアブサンをひとたらし。
葉蔵が阿鼻叫喚の中で生きてきた所謂「人間」の世界、そして辿り着いた場所とは…。
「ただ、一さいは過ぎて行きます」
物語の終焉に相応しい一杯。
頽廃の味に身を委ねてみては如何でしょう。
書籍とご一緒にお愉しみくださいませ。
子供たちは、桜桃など、見た事も無いかもしれない。
食べさせたら、よろこぶだろう。
父が持って帰ったら、よろこぶだろう。蔓を糸でつないで、首にかけると、桜桃は、珊瑚の首飾りのように見えるだろう。
(太宰治『桜桃』より抜粋)
6月の文豪カクテル・モクテル
太宰治
『桜桃クリームソーダ』
作中にて、“珊瑚の首飾りのよう”と描写された桜桃をたっぷり使用し、この時期だけのクリームソーダに仕立てました。
ブランデーとヒーリングチェリー、ジンジャーエール、スパイスをあわせた大人の味わい。
ノンアルコールでもお作りいたします。
こちらは6/6(火)より終日ご提供、是非ご賞味くださいませ。
十誡では稀少な書籍もご用意しております。
壊れやすいものもございますので、書架に置かれていない蔵書につきましては、スタッフにお声がけくださいませ。
6月もみなさまのお越しを心よりお待ちしております。